Photoshop for iPadを検証。【2024年版】使い方など基本情報を解説 ~ペンツールは使える?〜
iPad版Adobe Photoshopが2019年にリリースされました。
Photoshop iPad版はPhotoshopをiPad用として最適化した画像編集アプリケーションです。
タブレットのタッチ操作だけで編集作業を行うことができるので外出時の編集などに重宝します。
今回の記事では、iPad版Adobe PhotoshopはWEBデザイン制作業務で使えるのかを検証していきます。
個人的に使ってみたい機能はパスを使って写真を切り抜くペンツールです。
以前ApplePencilを購入したのですがあまり使う機会がないので、iPad版Adobe Photoshopを使うのに役立つツールになればと思います。
※2023年1月に最新情報追加しています。
公式サイト:https://www.adobe.com/jp/products/photoshop/ipad.html
目次
iPad版 Adobe Photoshopとは
Adobe Photoshop iPad版は慣れ親しんだPhotoshopの機能を使用して、iPadで指や筆圧感知ペンを使用して制作できます。
PC版に比べ利用できる機能が限定されているものの、基本的な機能は押さえられています。また、iPadに最適化するよう操作性に工夫がされているのもポイントです。
写真のレタッチや合成、オブジェクトの削除や置き換え、色のシームレスなブレンドなどがおこなえます。レイヤーはすべてそのまま、解像度も同じです。クラウドにプロジェクトを保存できるため、常にすべてを最新の状態に保つことができます。
買取型のパッケージ版は提供されておらず、月額で毎月支払うサブスクリプション型で利用します。
Photoshop iPad版も出た当初は酷評されていましたが、アップデートを重ねるにつれて使える機能も増えてきました。
iPad版 Adobe Photoshopを費用と入手方法
価格や料金プラン
iPad版 Adobe Photoshopはサブスクリプション型の有料ソフトで、様々なプランで利用できるため、料金体系が分かりにくくなっています。
自分に合うプランはどれかを選ぶ判断材料として本記事を活用していただけると幸いです。
Adobe Creative Cloud(AdobeCC)をやデスクトップ版Photoshopを既にお使いなら追加料金なしで使うことができます。
ただ、Photoshopしか使わないならフォトプランがお得です。iPad版とデスクトップ版のPhotoshopが利用できます。
フォトプラン月額:1078円(税込)
単体プラン月額:2,728円(税込)
学生・教職員向け:1,980円(税込)
Photoshopを利用するには、単体プランもフォトプランがあり、Photoshop自体は全く同じものです。
Photoshop単品プランは2,728円(税込)なのはオンラインストレージが1TB付属しており、フォトプランは20GBしか利用できないため、価格が安くなっています。
インストール
iPad版 Adobe Photoshopアプリを下記のApple Storeからダウンロード、インストールします。
https://apps.apple.com/jp/app/adobe-photoshop/id1457771281
インストール後アプリを開き、Adobe IDを入力します。
iPad版 Adobe Photoshopを検証
パソコンで制作したWEBデザインデータ(PSDファイル)をiPadに送り、検証していきます。
iPad版 Adobe Photoshopの編集画面のUIはシンプルです。
作業スペースをできるだけ広く使えるように、メニューやツールはできるだけコンパクトに設計されているようですね。
実際に作業してみた結果、iPad版Photoshopはできないことが多く、不便だなと思いました。
まずはできることから詳しく上げていきます。
できること
・テキストの変更、修正
Bluetoothのキーボードがあると便利ですが、なくても入力可能です。
・写真の差し替え
・オブジェクトの移動、拡大縮小
※ただし、写真を拡大縮小するとバグが起こりました。写真を移動させても画面が変化しないというものです。
ですが、記録上では移動しているようです。一度アプリを終了すると、このバグは消えました。
今回使用したiPadが旧モデルの第六世代で、容量が32GBというスペックのせいかもしれません。
・手のひらツール
左にあるツールメニューを何も選択しない状態だと手のひらツールになります。
・全体表示と100%表示切り替え
中央上部のファイル名の隣にある%数値をダブルクリックすると、全体表示と100%表示が切り替わります。
・Cloud保存
Adobe Creative Cloud上に保存されるため、パソコンで編集できます。同一のAdobe IDで連携したPhotoshopを立ち上げ、”最近使用したファイルから開く”からファイルを開くことができます。
次に、使いにくいと感じた部分や、未対応の機能などについて詳しく上げていきます。
不満点
・レイヤーを選択してからではないとオブジェクトを選択できない。
・PhotoshopをWEBデザイン作成で使用する際に必須の機能が、iPad版では未対応のものが多い。
例えば、レイヤープロパティ、スマートオブジェクト、長方形などシェイプツール、ペンツール、ショートカットキー、etc…
・頻繁に落ちる。
スペックの低いiPadでもサクサク動いてくれてはいるのですが、前触れなくアプリが終了してしまいます。
iPad proなどのハイスペックデバイスならこの問題点はクリアかも?
総評
検証の結果、現状のiPad版 Adobe Photoshopは出先でのちょっとした修正(テキスト、画像差し替え)での使用なら、なんとか使える……というレベルでした。
残念ながら、WEBデザインをする際にメインで使うことはまだできません。
今後のAdobeのアップデートに期待することにしましょう。
上図は今後Adobeで準備中の機能です。これらの機能が使えるようになれば、だいぶ使い勝手がよくなるのではないでしょうか?
【2024年最新版】のiPad版 Adobe Photoshopで出来ること
リリース当初のiPad版Photoshopでは上記機能がありましたが、2024年現在は以下の機能も追加されています。
・レイヤー機能
画像編集には必ず必要なレイヤー機能がiPad版Photoshopでも利用可能です。
レイヤー機能はオブジェクトごとに奥行きのある編集ができるようになるので、例えばA・B・Cの画像があった時にレイヤーで分けてA・C・Bの重なりに変更したり、Cのみ削除するなど部分的な変更が簡単にできるようになります。
レイヤーのコピペは勿論のこと複数選択や表示・非表示、削除や拡大・縮小も簡単にできます。
・レイヤーマスク機能
レイヤーにマスクをつけて画像を編集する機能がiPad版Photoshopでも利用できるようになりました。
オリジナルの画像をいじらずにマスクを介して編集できるので、例えば一部分の色相や色調を調整したい時などにも便利です。
よくある加工として、一部の色を残したまま他はモノクロといった画像編集がありますが、こういったハッとさせられる画像作成がiPad版Photoshopでもできるようになったのは強いですね。
・描画モード
多くの画像編集ソフトに備わっているように、iPad版Photoshopにもは描画モードがあります。
描画モードでは、下のレイヤーを参考に色を合成し表示できる機能などを選べます。
通常の描画モードでは、100%描かれたものが表示されますが、例えば減算カテゴリーの描画モードを選ぶと、下のレイヤーの色とかけあわせた暗い色が表示されます。
このモードがあることで、例えば影を描写したい時に下のレイヤーの色と混ざった暗い色を追加できるので、自然な影色を演出することもできるようになります。
描画モードには、下のレイヤーの色を参考にしない通常カテゴリーのほか、暗くする減算カテゴリー、明るくする加算カテゴリー、コントラストをはっきりさせるモードや、上下レイヤーの色を比較しつつ合成するモード、色相・彩度・輝度を基準とした合成モードなどがあります。
・トーンカーブ
線グラフを上下に動かすだけで、簡単に明度やコントラスト変更ができる機能です。
カラーチャンネルごとに色味変更もできるので、直感的に画像の雰囲気を調整したい人にもおすすめできる機能ですね。
線グラフの左はシャドウ、右はハイライトを調整できるので、例えば線グラフの左を上に持っていくとシャドウが消えて真っ白の画像になりますし、右を下に持っていくとハイライトが暗くなり真っ黒の画像になります。
また、シャドウとハイライトの範囲を変更することも可能なので、左のシャドウを右にずらしていくと影部分が濃くなり黒くつぶれる部分が出てきます。
右のハイライトを左にずらすと、明るい場所が強調され白飛びができます。
作りたい画像の調子を簡単に整えられるので、画像編集するなら理解しておきたい機能ですね。
ちなみにレイヤーマスク機能でもトーンカーブを利用できるので、レイヤーを重ねてコラージュ画像を作る場合にも重宝します。
・ブラシ
形状や種類を選んで使えるブラシツールは、様々なテイストの線を描けます。
また、カスタムブラシも作成できるので、オリジナルテイストのブラシを作って使用することもできます。
更に作成したブラシは、iPad版Photoshop以外のAdobeFresco(アドビフレスコ)やCLIP STUDIO(クリップスタジオ)などのお絵かきソフトでも共有して使えるので、使える幅が広い機能です。
・クリッピングマスク
クリッピングマスクとは、下のレイヤーだけにブラシなどの効果を反映させられる機能です。
例えばAに★型のオブジェクトがあり、クリッピングマスクを利用すると★型のオブジェクト部分にだけブラシなどの効果が反映されます。
クリッピングしたオブジェクトの外側にある余白などにはブラシがはみ出さないので、オブジェクトにのみグラデーションをかけたい時などにも使いやすいですね。
・オブジェクトを選択する
選択したい場所を選択ツールで囲むだけでAIが自動で選択、切り抜きを時短できるとても便利な機能です。
例えば★型のオブジェクトの星部分のみ選択したい場合でも、選択ツールで四角く選択するだけで、AIが★型を自動選択してくれ簡単です。
・ぼかし効果
全体的またははっきり見せたい範囲以外にぼかしを入れられるガウス機能を利用できます。
奥行きを演出したい時などにも重宝します。
・選択・変形・トリミング・回転
選択し変形・トリミング・回転できる機能です。
オブジェクトを自由に多方向に収縮させたり歪ませたりできるので、オブジェクトを自由に変更したい時に使いやすいですね。
・コンテンツに応じた塗りつぶし
コンテンツに応じた塗りつぶしとは、例えば写真の中の一部分をまるで最初からそこには何もなかったかのように消し去りたい時に使えるツールです。
消したい場所を選択するだけでAIがオブジェクトがオブジェクトを消したうえで、背景の画像を描いてくれるので、例えば画像の中の通行人などを消したい時などに重宝します。
ただし、なんでも消せるわけではないのでこの点は注意しましょう。
あくまでも、背景を参考に描いてくれるので、例えば背景Aの手前にオブジェクトBがあり、その前に消したいオブジェクトCがある場合、オブジェクトCを消そうと選択すると背景AとオブジェクトBが混ざったような違和感のある背景になる可能性があります。
背景と消したいオブジェクトの2つのみがあるような画像であれば綺麗にコンテンツに応じた塗りつぶしができる可能性がありますが、ごちゃっとした背景や、オブジェクトが多い中での「コンテンツに応じた塗りつぶし」は違和感のある画像が出来上がる可能性もありますので、使いどころに注意しましょう。
使えるツールが増えて便利にはなっている
以前と比べると、使えるツールは格段に増えています。
ただし、それでもまだまだプロ仕様とは言えないので、デスクトップ版の完全な代わりにはならないという評価です。
とはいえ、アップデートはまだまだ続いていますので、今後に期待できるアプリには違いないですね。
また、iPad版の強みであるペンツールは、デスクトップ版で行う切り抜きよりも使いやすいです。
ピンチアウトで拡大・縮小・回転しながらペンで細かなところまで塗れるので、直感的な編集がしやすいですね。
なので、デスクトップ版とiPad版の良いところを分けながら利用する使い方であれば、プロ目線でもありです。
iPadでペンツールを使えるアプリ Vectornator X
現状のiPad版Photoshopにはペンツールは、残念ながらまだ準備中のようです。
そこで、iPadでペンツールを使えるアプリがないかと探したところ、Affinity DesignerとVectornator Xというアプリを発見しました。
Vectornator Xは無料(2020年6月現在)なので、インストールして実際に使ってみました。下記のURLからAppleStoreにアクセスしてダウンロード、インストールできます。
https://apps.apple.com/jp/app/vectornator-x/id1219074514
Vectornator XのUIもシンプルでコンパクトな作りになっていますね。iPadはパソコンよりも画面が小さいので、できるだけ作業領域を広くする工夫がiPad版Photoshop、Vectornator Xに共通しているようです。
個人差はあると思いますが、私はVectornator Xのペンツールは使いやすいと感じました。以前、Wacomのペンタブレット(板タブ)でペンツールを操作していたのですが、マウスを使った作業よりも使用感はそちらに似ています。IllustratorやPhotoshopと同じショートカットキー(ハンドルの片方だけを動かす場合はoptionを押しながら操作するなど)が使えることもポイントです。
IllustratorやPhotoshopと操作が違う点もあります。ハンドルのオンオフはスムーズポイントをダブルクリック、などです。
マウスで長時間パスを切っていると手が疲れてきますよね。そういったときにこのVectornator Xを使用してみるのはどうでしょうか?
また、Vectornator Xでの作業後は拡張子を.aiとして書き出し可能です。
iPadからパソコンへデータを送ってIllustratorで開いてみたところ、vectornator Xで引いたパスはしっかり保存されており、Illustrator上でも編集することができます。
ちなみに、今回の記事の表紙画像のApplePencilは、Vectornator Xのペンツールを使って写真を切り抜いたものを使っています。
まとめ
以前のiPad版Adobe Photoshopは、機能面においてまだ発展途上な部分が多く、WEBデザイン制作で使用可能な場面はかなり限られていましたが、2024年5月現在のiPad版Adobe Photoshopはデスクトップ版でできることができるようになり、使い勝手も大幅に良くなっています。
まだまだデスクトップ版と全く同じというわけにはいかず、仕事に100%使えるツールというわけではありませんが、アップデートは続いているので今後に期待しましょう。
Adobeの開発が進展を待つしかないのが現状ですが、どうしてもiPadを使って作業したい場合は、Vectornator Xのような代替機能を持つアプリを使うのがベターだと思います。